クルマの三大要素と言われる『走る、曲がる、止る』の中でも、最も重要なのが『止る』こと。安全性を確保するのはもちろん、コーナーを速く駆け抜けるためにも余裕のあるストッピングパワーは欠かせない。ハデさはないが、強化をすれば確かな効果が実感できる、堅実なカスタマイズの第一歩としてもオススメだ。 そこで今回は、スポーツブレーキパッドのパイオニアであるウインマックスにお邪魔して、ブレーキチューニングのイロハについて話を伺っていこう。

ブレーキパッド

クルマを減速したり停止させる役割を担うブレーキシステム。まずはそのメカニズムをおさらいしておこう。ドライバーがブレーキペダルを踏むと、ブレーキフルードの液圧によりキャリパー内のピストンを押し出され、パッドがローターに押し付けられる。その際に発生する摩擦力によりローターの回転が抑制され、減速が始まる。クルマが安全に止るために、そして車速をコントロールするために欠かせない存在というわけだ。

ところで、なぜブレ-キパッドの交換が必要なのか? 純正パッドは、一般道路を誰もが“普通”に使えることが大前提。併せてノイズやダストを抑えることも重要視される設計となっている。よって、急制動が繰り返されるサーキット走行で……といった使い方は考慮されていないのが一般的だ。

対して、スポーツパッドには摩擦抵抗が大きくなる素材が含有され、速度が高い領域(ローター温度域)での使用も考えて開発されている。すなわちスポーツパッドに交換すると、純正よりもブレーキの効きが良くなるだけでなく、耐フェード性も高まる。さらにスポーティなペダルタッチに生まれ変わるなど、数多くのメリットが授受できる、とても費用対効果が高いチューニングと言えるのだ。

なかには『ケチらず高性能なサーキット用を入れておけば良いだろう』と思っている人もいるが、それは間違い。肝心なのは、あくまで自分の使い方(ローター温度域)に合ったパッドを選ぶことなのだ。

街乗りしかしないのに“サーキット用パッドを入れたらすぐにパッドが摩耗した”とか、スポーツパッドだから良いだろうと“ストリート用のスポーツパッドでサーキットを走ったらフェードした…”なんて話もありがち。走るステージに合ったパッドを、適性温度域で使用することが重要というわけだ。

『効きをよくしたい』『ダストを減らしたい』『摩耗限界を迎えた』など、パッド交換に踏み切る理由は様々だろう。しかし異音もダストも出ないのにサーキットの連続周回に耐える…なんていう夢のようなパッドは残念ながら存在しない。快適性とスポーツ性能は相反する性能要求であるからだ。

さらにブレーキの効き具合(フィーリング)も人によって好みが分かれるのもパッド選びの難しさ。踏み始めからガツンと効くのが良い人もいれば、奥で効きが立ち上がるコントロール性を重視する人もいる。

そこでオススメなのは、まずは中間モデルから試してみること。ウインマックスの製品であれば、ミニサーキットを走るなら『ARMAスポーツAP2』を試してみて、もっとコントロール性を重視したいなら『AP1』を、効きや耐熱性を重視したいなら『AP3』と、好みに応じて理想のパッドを絞り込んでいく。街乗りメインの人も然りで、まずは『ARMAストリートAT2』から試してみるのが良いだろう。

ブレーキローター

ブレーキパッドはローターに押し付けられることで摩擦力を発生。運動エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に放出することで制動力に変えている。故に、いくらハイスペックなパッドを入れても、ローターがレコード盤のようなスジができていたり、歪んでしまっていたら本来の制動力を発揮できない。

パッドを新品するなら、ローターを平らに研磨するか新調するのがオススメだ。ローターが傷んでいると、しっかり面で当たらず効きが悪くなったり、パッドを痛める原因にもなりかねないからだ。パッドと同じようにローターも消耗品のひとつであることを覚えておきたい。

ひと言でローターと言っても種類は様々。スタンダードなプレーンタイプの他、スリット入りや2ピースタイプなどもある。ただし本格的に走るわけじゃないならプレーンローターで十分。まずは程度の良いローターを使ってほしいと、ウインマックスの中沢さん。

けれど、スリット入りのローターにすれば、炭化したパッド表面をキレイにしてくれるので性能の回復が早かったり、パッドの食いつき感が上がったりというメリットがある。少しでもグレードアップしたい人にはオススメ。予算が許すなら検討する価値ありだ。