ホンダ第三期F1活動のまさにハイライトシーズンとして、今も多くのファンの記憶の中に琢磨&006の勇姿が刻まれている。

1950年から始まったF1グランプリの歴史の中で、2004年シーズン以上に日本人ドライバーが勝利に近づいた瞬間はなかった。佐藤琢磨は予選ではシングルポジションの常連、入賞も複数回、さらに日本人初のフロントロウに、日本人として14年ぶりの表彰台にも立った。琢磨の僚友ジェンソン・バトンも何度も表彰台フィニッシュを繰り返し、ふたりが駆るBAR006・ホンダの秘めたるスピードは衝撃的だった。結果的に優勝こそ逃してしまうが、圧倒的強さを誇示したディフェンディングチャンピオンのミハエル・シューマッハー/フェラーリを猛追し、コンストラクターズ2位の大躍進。

006を走らせた技術者たちの声

日本人の多くの夢を乗せて2004年シーズンを戦った006。前年、表彰台と無縁だったBARにとって6台目のグランプリカーは、突如なぜ見違えるようなスピードを手に入れたのか? 今回も多くの技術スタッフが当時のエピソードを披露。テクニカルディレクターだったジェフ・ウイリスが車両開発面、空力担当だったウイレム・トーエが当時の風洞施設、そしてアンドリュー・ショブリンが担当したジェンソン・バトンの才能を語り尽くす。

世界がそのスピードを認めた瞬間

決勝最高位3位、予選最高位2位、ドライバーズ選手権8位。ルーキーイヤー以来のレギュラー復帰を果たした佐藤琢磨は、2004年シーズンに輝かしい成績を残した。不遇なトラブルに見舞われることも少なくなかったが、関係者の多くが琢磨のスピードを知ることとなる。琢奇しくも20年前にF1唯一の表彰台に立った地であるインディアナポリス(2024年インディ500開催中)で、愛機006との共闘を語る。

ホンダ第三期最高の輝き

2000年より始まったホンダの第三期F1活動。新興チームBARとの共闘は、決して順風満帆な船出ではなかった。しかし、復帰5年目04年は、驚愕のエンジンパワーでF1界を震撼させた第二期を彷彿させるような存在感を示す。二期も知る(のちに四期も経験)ホンダF1の生き字引的存在の田辺豊治、04年エンジン開発の責任者・櫻原一雄、F1で戦いたい希望を叶え戦った現役F1メカニックの吉野誠──ホンダ関係者3名のインタビュー

エアロパッケージ全網羅

全仕様とモディファイをフォローするGP Car Story恒例の人気企画「Variations」。006が戦った2004年の全18戦をカバー。「ホンモノの目」を持つ高安丈太郎氏の解説で「こんなの知らなかったぞ!」という“新発見”をご堪能あれ! 同じく人気企画、マシンの細部を探る「Detail File」もお見逃しなく。

若き日の「小松礼雄」を知る

現在、ハースF1のチーム代表を務める小松礼雄が、ひとりのF1エンジニアとしてキャリアをスタートさせたチームがBARである。おそらく当時の彼を知る物は多くはないはずで、04年当時、若き日の「小松礼雄」を自らが語るインタビューは貴重。のちにルノーへ移籍することで、そこで得た経験からチャンピオン経験チームと、新興チームの違いを技術者の目線で的確に分析する。アロンソにあってバトンにかなったものとは……。

自分が何者かを証明したシーズン

ウイリアムズでセンセーショナルなF1デビューを飾ってから、ジェンソン・バトンは燻っていた。04年開幕時点で表彰台も「0」。まだ自分が何者なのかも世間にアピールできていなかった。そんな男が006という相棒を得た瞬間、覚醒の時を迎える。「いつ勝ってもおかしくない」──世間はバトンを次代のスターとして評価し始める。バトン自身が、F1キャリアの礎とも言える忘れ難きシーズンを振り返る。

サンエイムック GP CAR STORY Vol.48 BAR006・ホンダ

発売日:2024年6月10日
税込定価:1,350円

002-003 sense of unity──Prologue
006-013 目をつけられた潜在的速さ──006 Gallery
014-019 忘れられない感触──佐藤琢磨インタビュー
020-025 見よ、最前線で示す日本勢の存在感──Flash Back
026-031 異なる企業文化の狭間で──ジェフ・ウイリス インタビュー
032-041 006 Variations──レースごとの仕様とモディファイ
042-046 風洞を近代化せよ──ウイレム・トーエ インタビュー
047-051 未来を託せる天賦の才──アンドリュー・ショブリン インタビュー
052-055 ルノーにあって、BARになかったもの。──小松礼雄インタビュー
056-063 006 Detail File――マシンの細部を探る
064-072 第三期に轟く“再生”のホンダ・ミュージック
   Voice #01 田辺豊治──存在した車体開発とエンジン開発の壁
   Voice #02 櫻原一雄──集大成のつもりで開発したRA004E
   Voice #03 吉野 誠──夢の舞台で戦う多幸感と自責の念と──
073 「0勝」で名門の上に立つ価値──GP Car Column❶
074-077 ホンダの利益を最大限に──オットマー・サフナウアー インタビュー
078-081 あれから葉巻きは吸っていない──デビッド・リチャーズ インタビュー
082-083 今も変わらぬ景色のなかで──GP Car Column❷
084-087 タイヤが違いを生み出した──アンソニー・デビッドソン インタビュー
088-093 キャリアの礎を築いたシーズン。──ジェンソン・バトン インタビュー
094-095 ミハエル圧勝、18戦13勝でV7達成!──2004年のF1世界選手権を振り返る/006全戦績
096-097 BAR006、全バラ&リビルド大作戦──GP model Story #38
098 次号予告
099 Epilogue